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【2024/03/29 14:53 】 |
~誕生~ その③

5/8は母の日です。
皆さんは母の日に何かプレゼントとかあげたことはありますか?
この年の俺の母の日のプレゼントは最低なものでした。

5月8日

「どうした?」
と普段連絡しない俺からの連絡に
何事かと心配気に電話に母がでました。

「いや・・あのさ・・・・」
いいづらそうな電話口の俺。
なんとか話を切り出すタイミングを計っていたのです。

「今日母の日だからさ~・・」
こんな関係ない話からでしか切り出せませんでした。

「おお。ありがとう」
「それでさ・・・」
喜ばれた反面、本題が言えない・・・。

「なんだ?」
母がせかします。
「うんとね・・・」

沈黙。

意を決して

「あのさ。子供できた」
「は?」
頭がついてきていないようです。

「彼女に子供できた。んで、今彼女の家に来てるんだけどさ。」
「・・・・」
「俺、生ませてあげたい」
「・・・・」

再び訪れる沈黙。

「今までで最低な母の日だな・・・・」
この言葉を最後に母は電話を切りました。

まったくそのとおりです。
母の日に息子の妊娠話なんて・・・

ふと昔のことを思い出しました。

 


小学校の頃、母の日には決まってプレゼントを渡していました。
低学年の頃はそれこそ王道の「肩叩き券」

一度も母は使ったことがなかったけれど
毎年同じプレゼントにも関わらず、喜んでくれていました。

中・高学年になったくらいから
それなりにお小遣いももらっていたので(それでも500円とかでしたが・・
プレゼントはちょっとだけ高価に。

「ババロア」と「カーネーション」です。

ババロアは母自身が好きだったということもあり、
度々おやつとして作ってくれていました。

その母の作るババロアが好きだった俺は
母の日くらい自分で作ってあげようと考えていたのです。

母にばれないように材料を買い、
母が仕事にいっているうちに祖母の手を借りつつですが
ババロア作成に取り掛かりました。

いくら混ぜるだけの材料を買ってきたからといっても
普段料理とは無縁の小学生。
ちゃんとやったつもりでも、どこかに失敗点があるものです。

それでも早くしあげなければ母が帰ってきてしまいます。
子供ながらに慎重に、そして迅速に作成し、
あとは固まるまで冷蔵庫へ。

ん?冷蔵庫入れたらばれるじゃん
と、あわてて大きなバットに氷を敷き詰めて
ババロアを入れた容器にラップをして、一旦納屋に保管。

しばらくして母が帰宅しました。

「おかえり」
落ち着かない俺。

「ただいま。なんかしたでしょ?」
鋭い母です。

「な、なんもしてないよ」
ゲームのできる部屋に逃げます。

「ふ~~~~ん・・・」

なぜか俺の隠し事・嘘をついているときは母にばれました。
(後日談でそんなときは決まって鼻の穴広がるとの事・・・

夕ご飯がおわり、そろそろババロアが固まった頃合。

「お母さん。母の日のプレゼント」
姉に先をこされました。

お酒が苦手なのにワインだけは好きという
わけのわからん母へのプレゼントは「ワイン」と「カーネーション」
安物のワインですが、小学生には高価です。

さすが俺よりも4つ上の姉。金額が違います。
「ありがとう」
うれしそうな母。
先を越されただけでなく、喜んでいる笑顔を見ていると
自分のは渡しづらくなるもので。

「お前は?」
姉がせかします。
「ん・・・ないよ」
「だってお小遣い、ねぇちゃんより少ないもん」
「お金じゃないじゃん」
小競り合いが始まります。

「やめなさい!」
男と女といえど、まだまだ小学生。
4つ上の姉に勝てるわけもなく、退散しようとしたとき

「これ渡すんだろぉ?」
祖母がババロアをもってきました。

「あ・・・」
「いいんだよ。失敗作だから明日俺が食べるんだから・・・」
なみだ目でいいます。

何も言わずに台所に向かう母。
人数分の皿とスプーンをもってきて、人数分に切り分けます。

皿にわけられたババロア。
混ぜ方が足りなかったのか、均一になっていませんでした。
沈黙のまま、母が一口。

「お。なかなかじゃん。」
「ほんと・・・?」
「うんうん。おいしい。」
見た目では、とてもおいしそうに見えないババロア。

それでも母は「おいしい」をずっといっていました。
「あれ?なんかはいってる」
それは卵の殻でした。
「あ・・・殻はいっちゃってたみたい・・。ごめんなさい・・」
さらに肩を落とす俺。

失敗も失敗で、祖母がもってきたことを恨めしくさえ思っていたとき、
「大当たり~~~~♪」
母がいいました。
「みんなも食べてみて」
言われるがままに食べる家族。

「殻はいってた人いた?」
家族は首をふります。
「ほら。やっぱりあたりだ」
「お母さんのにだけ入ってたってことはこれが特別ってことでしょ?」
「ありがとうね」
その言葉がなによりでした。

さっきまで喧嘩していた姉も
「うんうん。うまいうまい」
そういって食べてくれています。


食べてもらえたこと、喜んでもらえたことが
よほどうれしかった俺は早々に床につきました。

 


そのあと何年も経ってから親父から聞いた話ですが
あの夜母は泣いていたそうです。

自分のために子供がしてくれたこと。
そして何より子供の成長がうれしかったようで。

そのとき同時に知らされたのは「肩叩き券」の行方です。

幼稚園から小学校低学年にかけて俺があげていたそれを
何十年と経っている今でも大事に保管しているということ。
だんだん文字が漢字になっていったり、
書く文字がうまくなっていっていることに涙していたそうです。

改めて母親の偉大さ、大切さ、愛しさを知りました。

そのはずだったのに、その母を泣かせてしまった。

電話はすでにきれているのに、
それでも電話を耳から離すことができずに、

「かあちゃん。ごめんな・・・」

ため息のように細く、
それでも部屋一面に広がった一言。

涙が一緒に流れてきていることすら気がついていませんでした。



 

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【2009/02/28 13:04 】 | 暇つぶし | 有り難いご意見(0) | トラックバック()
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