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【2019/10/21 09:02 】 |
~誕生~ 最終話

妻が分娩室に入ってからどれだけの時間が流れたのでしょう。
俺は分娩室のドアの前から動くことができずに、ずっと立ち尽くしていました。
考えにふけるわけでもなく、何も考えていないわけでもなく。

ただ、妻と子供の身を案じて。

「煙草でも吸いにいくか?」
お義父さんです。


「今更だけどあの子も人の親になる年になったんだな・・。」
妻のことをいっているようです。

「俺にとっては、まだまだ子供なんだけどなぁ。」
「・・・・」

「おまえもな。心配してもしょうがない。男ならビッとしてろ。」
「・・・・はい。」
返事はしたものの、そんなことができるわけもなく。

「女はすごいから。なんてったって自分で親になれるんだからな。」
・・・・?
いっている意味が理解できませんでした。

「相手が誰であったとしても、女は自分で子供生むだろ?」
「あ・・・」

「うん。自分の腹からでてくるんだからな。」

「でも、男はそうもいかないよな?自分で生めないからな。」
「・・・はい。」

「だから男は子供に親にしてもらうんだ。」
"子供に親にしてもらう"。
こんな考え方をしたことがありませんでした。

「自分から親になれるだけ強いんだよ。女はな。」
「・・・そうですね。」

お義父さんがなにを言いたかったのか、本心の8割以上理解できない状況ではありましたが、それでもその言葉は心に染みました。

喫煙室から戻ってきた俺は、さっきと変わらず分娩室の入り口に立ちました。

「まだまだ時間かかるよ・・?」
後ろのベンチに座っているお義母さんがいいます。

「・・・わかっています。」
「こっちきてゆっくり座ってなさい・・?」
その気遣いがとても嬉しかったのです。

しかし、
「いえ。大丈夫です。立ってますから・・」
「え・・?」

「あいつが中でがんばってるんです。だから・・俺も外で立って待ちます。」

「なんの力にもなれてないですけど、それでも立って待ちます。」
直接目で見たわけではないのですが、後ろからお義母さんの泣く声がもれたような気がしました。

こんなことしてても意味がないことだと、何の役にも立たないことだと、自分でも分かってはいながら。
それでも俺は出産が終わるまでたっていようと。

また、どれくらいの時間が流れたのでしょう。

分娩室の中からかすかに聞こえてくる、先生と助産婦さんと妻のうめき声に似た声。

"がんばれ!"
心でずっとずっと祈り続けていました。

 

オギャ~!!

あ・・・

それは今まで聴いたことのない声でした。
妻でも、先生でも、助産婦さんでもない。

「生まれた・・・・。」
「あの子がんばったね・・。」
俺の後ろでお義父さんと、お義母さんが抱き合っています。

しかし、次第にお義父さんたちの声が聞こえなくなりました。
分娩室の中から聞こえてくる、産声だけが俺の耳に入ってきます。

オギャ~!オギャ~!!
はは・・。すっげぇ泣いてるよ・・。

オギャ~!オギャ~!!
生まれたの、もうわかったよ・・・?

オギャ~!オギャ~!!
・・・・・生まれたんだ

涙が頬を伝います。
何かを思ったわけでもなく、ただただ頬を涙だけが流れていきます。

・・・二人ともがんばったね。
おつかれさま・・・。

よく生まれてきたね・・・。

生まれてきてくれてありがとう・・・。

忙しくなるなぁ・・

お前のために、お父さんがんばるからな・・・

これからよろしくな・・・。


1月だというのに、その日の風は春のような陽気で、冬特有の冷たい乾いたものではなく、穏やかに、緩やかに、涙で塗れた頬を軽く撫でていきます。

俺も親父にしてもらうことができたのです。

 

~誕生~  終わり

ありがとうございました。

 


 

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【2009/04/16 13:43 】 | 暇つぶし | 有り難いご意見(0) | トラックバック(0)
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