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【2018/05/22 07:38 】 |
~移り行くものと変わらぬ気持ち~ 第11話

祭りのあとは、かなり寂しさが残るもので。
寝ているやつらをたたき起こして、家に帰るようにしむけます。


みんなが家に帰り、残ったのは俺とゆうや。
学校でもそれなりに顔をあわせているので、そんなに報告らしい報告はなく、取り留めのない話をしていた気がします。

男同士の話で友情を語るタイミングなど、そうそうないものですから、さっきの飲み会でのゆうやとのちょっとした会話が、とても心に残っていました。

ゆうやはあまり自分のことを話すような男ではありませんでした。
俺もどちらかというと、話すほうではなかったのですが。

お互いに恋愛相談なんてことはしたことがなく、それでいてなんとなく、お互いの気持ちが分かっているという、なんとも不思議な関係だったのです。
そのゆうやが俺に話しを始めました。
「俺な。みんなとは違う部分で、おまえはエロいって思う。」
「は?」

「ああ。違った。偉いだ。」
「まぁエロいでもまちがってねーけど?」

「そりゃそうだ。」
いつもの冗談です。

「なにが偉いって?」
「ん。生ませたいって決めたことだよ。」

「ん?それって偉くないだろ?」
「いや・・。俺。今の彼女にこの前おろさせたから・・。」

「本当か・・・?」
「ああ。本当だ。」
こんな話をゆうやからするのは、本当にめずらしかったのです。

「できたって聞いたときな。正直うれしかった。」
このときゆうやは実家の近くに住んでいて、最近都内にでてきた女の子と付き合っておりました。
高校の後輩だったようで、女の子のほうがゆうやのほれ込んでいたのです。

「でもな。お前は嫁さんの実家こっちだろ?」
「そうだな。」

「俺ら向こうじゃん?生むってなったらさ、もどんないといけない。」
「ああ。」

「それにな。まだまだ経済力もねぇしな。実家帰ったとしても、親父の跡ついで漁師なるくらいだ。」
「まぁな・・・。」

「だからな。同じ大学生だけど、お前は生ませてあげれて、俺はできなかった。」

「だからお前の覚悟とか、気持ちとか他のやつよりはわかるんだ・・。」

「俺も1回生ませたいって思って、覚悟決めようとしたからな・・。」
「ゆうや・・・。」
酒を飲んでいたこともあり、ゆうやの家までの道のりを2人で歩いて帰っている途中でした。

「うん。お前の言いたいことわかった。」

「でもな。今の話し聞いて、お前のほうが偉いと思う。」
「え・・?」

「俺はな。簡単にいったら"かわいそう"って気持ちだけなんだ。」

「今この子が生まれなかったら、同じ子は生まれてこないんだって気持ちだけだった。」

「経済力だの、今後のことだの、一番考えなきゃいけないこと全然考えてなかった。」
「うん。」

「たしかに嫁の実家こっちだからな。それに甘えてるんだと思う。」

「でも俺はそれを他から"こいつ甘えてるな"って思われないようにがんばればいいって思ってる。」
「そうだな。」

「おろすって決断のほうがよっぽど辛い決断だと思うぞ?」

「それを彼女に伝えるのなんかもっとだ。」

「俺な。お前のほうが俺より何倍もすごいと思うぞ?」
全て俺の正直な気持ちでした。
ゆうやも誰にも相談できずに、苦しんでいたんだと思うと、なぜ力になってやれなかったんだと自分への悔しさがこみ上げてきます。

「ありがとう・・・。」
そういったきり、俺のほうを向くことはなく。
時折、鼻水をすすっていましたが、同じくそれに俺が反応するわけでもなく。

「煙草・・吸うか?」
「おう・・。」
セブンスターを取り出してゆうやに1本渡します。

「そういや、この煙草も、俺がゆうやの真似したんだよな。」
「そうだったな・・。」

「"この喉にクッってくるのがいいんだよ"とかわけわかんねぇこといってやがったしな。」
「うるせぇよ。」

「最初は重くって全然すえなかったけど、今じゃこれじゃねぇとな。」

「やっぱ、煙草は重くってなんぼだろ?」
ちょっと笑いながらゆうやに問いかけます。

「ははは・・。当たり前だ。」

 


ゆうやの家のそばに川原がありました。
何をするでもなく、自然とそっちに向かう2人。

「この前な。ここに墓、つくってやってたんだ。」
たしかに最近、この川原でゆうやが一人たたずんでいるところを何度か見たことはありました。

川原の砂利のあるところの真ん中よりも、ちょっと土手よりに大きな岩が二つありまして、それの間にちょっとした石がおかれてありました。

「本当はな。この世に生ませてあげたかった・・・。」

「でも、それができなかったから・・。」

「少しでも太陽の日あびれて、少しでも空気のきれいなところで、少しでも自然に近いところで・・。」

「あの子に感じさせてやりたくって・・・。」

「んでな。1日1回はここで煙草吸うようにしてんだ・・・。」

「俺がお前の父ちゃんの匂いなんだぞってさ・・・・。」

「匂いなんか届くわけねぇのにな・・・・。」
そういいながら、吸っていた煙草を線香のように石の上に立てたのです。


俺はゆうやという人間に心底ほれこみました。
全てにおいて俺なんかよりもずっと真剣に考えている。
自分の事が情けなくすら感じました。


そのゆうやが俺を偉いといってくれた。
俺のほうがすごいって思ってくれた。
俺と出会ってくれてありがとう。
俺はこの先、お前の力になる。
何かあったら必ず駆けつける。


男友達にここまでの感情をもったことがなく、"親友"という言葉の本質が初めて分かった時でした。




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【2009/05/09 15:48 】 | 暇つぶし | 有り難いご意見(0) | トラックバック(0)
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