※当時の話の再現です
ここは昭和53年の4月。
普段と変わらない天気のよい午後のことです。
ジリリリリリ!
ジリリリリリリリ!
「はい。株式会社○○です~」
電話に出る親父。
「なんだ。お袋か。どうした?」
「え?」
「本当か!?」
「わ、わかった!すぐいく!!!」
「おー。どうした?慌てて。」
「子供!!」
「あ?」
「生まれた!女の子だ!!」
自分のはじめての子供が生まれたことで、俺の親父はかなり浮かれておりました。
大慌てで家まで車を飛ばします。
普通の会社員がこんな昼間に帰ってくるわけがありませんので、近所の人たちが、何事かと家の前に集まり始めました。
「おー。こんなに早くどうした?」
「ああ!生まれたんだよ!!」
「あ?生まれた?」
「子供!」
「なんだって?!」
「お!生まれたか!?おめでとう!!」
「いや~。よかったなぁ!」
田舎というものは、噂の広がる速度の速いこと速いこと。
あっというまにご近所さんが大集まり。
「よかった。とかった」
「いやいや。ありがとうございます♪」
「今日は酒盛りだ!!!」
昼間だっていうのに酒盛り開始。
明日母親が退院するというのに、飲めや歌えやの大宴会です。
それほど酒に強くない親父は、それこそ2時間くらいで出来上がってしまいます。
事件はそのあと起きたのです。
→→→→
翌日、母親を親父が迎えに言ったときのこと。
「がんばったなぁ。」
「あなた。女の子でごめんなさい・・。」
昔は跡取りを生まない嫁は、嫌われるといった時代もありました。
「まぁ。女の子でもいいじゃないか。次があるんだしな。」
「ありがとう・・・。」
母親は親父の優しさがうれしかったのです。
「あ。それとこれな。」
「え?なになに?」
戸籍謄本を手渡した親父。
「なんで戸籍謄本?」
中を見る母親。
"長女 加菜"
「名前付けてきたから」
「はぁぁぁあああ?!?!」
そりゃ母親もびっくりしますよね。
←←←←
「飲みすぎた~」
酔いを醒ますために外にでて散歩をする親父。
とことこ歩いているうちに町役場の前につきました。
「お。そうだ。名前つけるかぁ~♪」
町役場の中にはいっていく親父。
「娘の名前きめにきたんだけど~?」
「ええ!おめでとうございます!!」
「いや~。それほどでも~。」
別にあんたをほめてないから。
「んで。何書けばいいんだ?」
「これに書いてもらって~・・」
→→→→
「本っ当なに考えてるの?!」
「ごめんなさい・・・でも良い名前だろ・・・?」
「そんなことは関係ない!!!」
「・・・はい。」
「私の初めての子供なのよ?」
「・・・はい。」
「なんで勝手に決めるわけ?」
「・・・ごめんなさい。」
「謝ってすむなら警察いらな~~い!」
「・・ごもっともです。」
「次は私が決めるから!」
「・・・・はい。」
→→→→→→→→→→→→
「そんな話聞いちゃったら、簡単になんかつけれなくなるでしょ?!」
「そうだ・・よね。」
「本当になに考えてるんだか!」
同じように妻に怒られる俺。
俺・・怒られるこしてないんですけど・・・
→~移り行くものと変わらぬ気持ち~ 第3話へ
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