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【2024/04/29 21:30 】 |
~誕生~ その17話

次の日の朝。

「昨日何時くらいに帰ってきたの?」
朝からご機嫌斜めなお嫁さん。

「ん~・・あんまりよく覚えてない。」
「ふ~~~ん・・・」
ものっそい怒ってらっしゃいます。

しかし、実のところこの頃には、俺の気持ちは嫁には関心があまりありませんでした。
原因は『夫婦生活』です。

妊娠しているとはいえ、妊娠が分かり、一緒に暮らすようになってすでに9ヶ月。
その間一切ありませんでした。
だからといって誰かと浮気をするようなこともしませんでした。

え?みぃみちゃんはどうなんだって?
ちょっとみぃみちゃんについて先に記載しますか。

昨晩あんなことがあったにも関わらず、その後は別に連絡を取り合っていたわけでもなく、彼女には彼女の友達付き合いもあったでしょうし、高校がすこし遠いところにあったため、一人暮らしをしていたので、そこまで一緒にいる時間があったわけでもありません。
たまに2人きりで家の近くの居酒屋に飲みにいくくらいのものでした。
俺としても、そんなにマメに連絡をいれるほうでもなかったので、そのまま何事もないまま時間だけがすぎてしまったといった感じです。

と。話を戻します。

毎日バイト三昧で、1ヶ月のお小遣いは1万円。
大学生がこんなんでやっていけるわけがありません。

それでも、気持ちは離れつつあっても、『子供のため』と大義名分、バイトに勤しんでいました。
そんなバイトの休みのある日の出来事でした。

「ただいま~」
いつもよりもかなり早めの帰宅です。

誰もいないのかな・・?

1階には誰もいませんでした。

おかしいな・・。今日は検診日じゃなかったはずだけど・・・?

「いないの~?」
2階にあがる階段をゆっくり上がっていきました。
そうすると嫁が座って何か作業をしていました。

「なんだ。いるんじゃん。」
・・・・・

返事がありません。
また、なんか怒らせるようなことしたかな・・?

「どうしたん?」
・・・・・

相当怒ってるなー。

「俺なんかした?」
・・・・・

チョキチョキ。
ん?

チョキチョキチョキ。
なんか切ってる?

そーっと、目の前に回ってみると。

「なにしてんの?!」
誰が見ても驚く光景がありました。

大きなカレンダーを日にちごとにきれいに切って、1日から31日まで並べておいていたのです。
それは、なにか呪いの様にも見えたのです。

「なぁ!なにしてんの?」
そういって、嫁の手をつかもうとした時。

「うわぁぁあああ!」
奇声を上げながら、両手で今切っていたカレンダーを俺に向けて投げつけます。
そして、はさみを持ったまま俺に向かってきます。

これはまずい!
咄嗟に嫁に抱きつきました。

少し俺の胸の中でジタバタした後、我に戻ったのか
「私・・・なんかしてた・・・?」
覚えてないのか・・。

「これ・・・なんか切ってたよ・・?」
「あぁ・・・。」

嫁の話によると、朝お義母さんからいらないカレンダーをもらったときに、『この日に妊娠わかったんだよね』という気持ちから、この1年をカレンダーを見ながら振り返っていたとのこと。

自分が妊娠して、だんだんお腹が大きくなって、外に出歩くことも、家の階段の上り下りすることさえも、だんだん辛くなっていっているのに、俺は毎日バイトいけて、大学にもいけて、帰ってきたらお義父さんと一緒にお酒のんで、煙草吸って。
そうゆう全部が彼女を鬱状態にしたようでした。

「なんであんたは外にでれるの?!」

「なんであんただけお酒のめるの?!」

「なんであんただけタバコすえるの?!」

「なんであんただけ楽しそうなの?!」

「なんであんただけ・・・・」

そういって泣き崩れそうになる彼女を俺は抱きかかえました。

俺だって、別に遊んでるわけではなかった。
それでも彼女に対する思慮が足りなかった。
ここは彼女の家で、俺からすれば気を使うことは俺のほうであって、普段から嫌に明るく振舞うといったことをしていました。
それは、家族に俺がもう馴染んだというように感じてほしかったから。
彼女に俺のことで心配してほしくなかったから。
妊娠に集中してほしかったから。

そうだとしても。

俺はなんて馬鹿なんだろう・・・。
こんなに辛い思いしていたのに、なんで気が付かなかったんだろう。

妊娠の辛さは男には分かりません。
一生かけても味わうことができません。
"女じゃないし、分かる分けない。"と、どこか他人のように思っていました。
それ自体が間違ったことだったと、ようやく気づけたのです。

「ごめんな・・・。」

「わかってやれてなくてごめんな・・。」
彼女を抱きしめたまま、彼女の横で俺の目からも大粒の涙がこぼれます。

「もっと私のことみてほしかったんだよ・・」
「・・・そうだね。」
彼女は続けます。

「仕事してくれるのはうれしいよ?」

「大学にもちゃんといってほしい。」

「でも・・。でも・・・。」

「1日に1回でいいから私の名前呼んでよ・・・」
俺は朝は大学があったため、8時くらいに家をでて、バイトがあった日は深夜の3時くらいに帰ってきていたため、彼女と顔をあわせることがないまま1日が終わることも多々ありました。

深夜の3時くらいに帰宅したとき、たまたま彼女が起きてきたときの話ですが。
「帰ってきたら起こしてよ。」
「気持ちよさそうに寝てるからさ・・」
これは本当にそうであったことと、妊娠中で大変だろうという配慮から起こすことはしなかったのです。
しかし、それが彼女を逆に苦しめていたとは・・。
いろんなことが初めてわかりました。

俺にも感じること他にあったにしても、そのときだけは。
「本当にごめん・・・」

「ちゃんと見る。ちゃんと話す。ちゃんと名前呼ぶから・・。」
「うん・・・。ありがとう・・・」

そういって何かから開放されるかのごとく、彼女は眠りにつきました。
それを見守った俺の心には二つの気持ちがあったのでした。


→~誕生~その18話へ 



※そろそろ生まれますよ!
 私のジュニア誕生の瞬間です。
 まぁそこにも一騒動あったわけですが・・。
 
 

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【2009/04/10 14:13 】 | 暇つぶし | 有り難いご意見(0) | トラックバック()
~誕生~ その16話

<お知らせ:本日はラブラブモードです>


「宴たけなわではございますが~」
おぶ君の〆で運動会の慰労会終了。
ようやく大怪獣から開放されます。

人というのはすごいもので、こんだけ緊張というか気を張った状態で酒を飲むと全くといって良いほど酔いが回りません。
当のひでみちゃんは完全にできあがってますけども。

「あひゃひゃひゃひゃ~♪」
なにもないのに笑っています。
幸せな人ですね。はい。

こうなってしまってはみぃみちゃんに電話することもできずに、
「あれ~?お迎えがきてな~~~い」
「だって連絡してないでしょ?」
当たり前ですよ?ひでみちゃん。

「は~や~く~れ~ん~ら~く~し~て~♪」
はいはい。もうめんどくせー。

トルルルルル。
トルルルルル。

『もしもし?』
「あ。俺だけどさ。お母さん酔っ払いまくってるからお迎えお願いしてもいいかな?」
『もうちょっと待っててもらってもいいですか?』
う~~ん。声だけってのもいいかもしんない。

『今お風呂上りなんで・・♪』
お風呂上り・・・。
想像力をかきたてられます。


飲み会のあとは、なぜか飲んだ店の前でダラダラすることが多く。
みぃみちゃんに電話してから到着まで20分弱かかったわりには外で話をしていたせいで、それほど気になるほどの時間でもありませんでした。

「おまたせしましたぁ♪」
笑顔最高。
お風呂上りの良い匂い。


「お母さん!なにやってんの!!」
「あぁ~♪みぃみだぁ♪なにしてんの?」
あなたが向かえ呼べっていったんじゃないですか・・・

「電話きたから迎えにきたのっ!」
「ん~?あたし電話してないよ~?」

「だってお母さんじゃないもんっ!」
「んじゃぁ誰が電話したのぉ~?」
ん・・。なんか・・・この人酔っ払ってないんじゃ・・・?

「それは・・・」
困るみぃみちゃん。

「誰誰ぇ~?♪」
「いいから帰るよっ!!!」
みぃみちゃんキレました。

「かえんないっ!」
「なにわがままいってんの!」
親子喧嘩ってゆうより姉妹喧嘩みたいにみえなくもない・・・。

「だって~。このあとカラオケいくもん♪」
あんだけ歌ってまだ歌うか・・。

「だから~。みぃみは彼送ってってあげて♪」
へ?
なにこれ?棚から牡丹餅状態?

「え・・・。別にいいけど・・・。お母さんは?」
「ん~~~。適当に帰るから♪」
うん。本当に適当に帰ってきそうです。

「んじゃぁ。俺だけ帰っちゃうよ?ひでみちゃん。」
「うん♪」

「あ。みぃみのことね。」
「ん?」

「優しくしてあげてね♪」
なにをだよ。

 

車に乗り込む俺とみぃみちゃん。

「それじゃお母さんお願いします。」
「はいよ。まかせとけ!」
まぁおぶ君がいれば平気だろうと、俺とみぃみちゃんは帰宅することに。

 

家に向かう車の中。
「今日はお疲れ様です。」
「本当につかれたよ。」
まじでクタクタです。大怪獣の相手は辛いわ・・

「お母さん・・・大変だったでしょ・・・?」
ええ。そりゃもう大変なんてもんじゃなかったですよ。
でもそんなことは娘さんに言えるはずもなく。

「ん。大丈夫だよ。酔っ払い、慣れてるしね。」
「ありがとうございます♪」
こっちが気を使ったのを見破られてしまった感がありました。
この子って本当に優しい子なんだな・・。

「そういえば」
「ん?どうかした?」

「お母さん。キスしませんでした・・・?」
ああ。されましたとも。濃厚なやつをね。

「うん・・・。まぁね。」
「・・・・やっぱり。」
ものすごく悲しそうです。

性格上、適当なことを言って笑わせるということに長けていたので、
「ん~。んじゃぁ送ってもらったお礼に~。」
「え?」
「みぃみちゃんにもちゅーしてあげるね♪」
完全なる冗談で言ったつもりでした。

『本当ですかぁ♪」
あら?本気にとっちゃった・・・?

 

しばらくしてみぃみちゃんの家につきました。
嫁の実家から歩いて3分くらいの場所であったため、みぃみちゃんの家から帰ることにしたのです。

「送ってくれてありがとう。」
「あ・・・・」
本当にキスを期待していたご様子。
俺としては安易にそんなことして傷つけることはしたくなかったのです。

「みぃみちゃん。」
「はい?」

「俺ね。前にみぃみちゃんがいってくれたことうれしかったんだよ?」
「私がいったこと・・・?」

「そう。"結婚してなきゃ出会わなかったんだ"って言葉」
「はい・・・」

「確かにそのとおりだよね。今までの何か一つでもかけてたりしたら、出会ってないかもしれない、。」

「結婚してなかったら、俺はみぃみちゃんに出会うことはなかったと思う」

「だから、結婚してよかったって初めて思えた。」
「はい・・・。」
複雑な表情のみぃみちゃん。
そして俺もずるいのです・・。

「俺は君を傷つけたくないから。その気持ちは分かってくれる?」
「・・・・」

「でもね。それを分かってるのなら、俺は君にしてあげれることいっぱいあると思う。」

「それが君にとって、いつかは辛く感じることがあるだろうし、やめたくなることもあると思う。」
「・・・」

「それでもいいっていえる?」
「・・・・はい。だって・・・好きなんだもん・・・・」
細く、しまった体を秋風にさらされて、小刻みに震わしています。
それをすっと抱き寄せる俺。

「あ・・・。」
少し驚くみぃみちゃん。

「俺さ。みぃみちゃん好きだよ?」
「・・・はい。」

「でも、ずっと一緒にってのはできない。」
「・・・・・」

「だけど。こんなんだけど、俺のできる限りだけどさ。」
「はい。」

「幸せにしたいって思ってもいいかな・・・?」
「・・・・・はい。」
二重で大きな瞳から、大粒の涙が零れ落ちました。

「ずっとこうしたかったんだよぉ・・」
「・・・・そっか」

その言葉を最後に二人は会話ができなくなりました。

それも何度も。何度も。
「ん・・・」
時折もれる彼女の吐息が、とても愛しく、そして切なく。
運動会のときとは打って変わった静けさの中で、お互いの心臓の音さえ聞こえるの距離のまま、二人の時間はゆったりと流れていきました。

夏が終わりを告げ、気持ちよさを通り越し、肌寒さを感じれるほど乾いた風が俺たちの横を通り過ぎていきました。
 


→~誕生~その17話へ

【2009/04/09 13:26 】 | 暇つぶし | 有り難いご意見(0) | トラックバック()
~誕生~ その15話

その後も大怪獣の勢いは止まることを知らずに。

「あははははは」だの。
「ぎゃはははははははは」だの
「うああああああああ」だの。
叫ぶわ叫ぶわ。

その都度、隣にいる俺は抱きつかれたり、ひっぱたかれたり、ほっぺにちゅーされたりと、もうさすがにうんざりしておりました。
しかし、こっちの気持ちを知ってか知らでか。
「もっとこっちきなよ~♪」
「いや・・・ひでみちゃん。飲みすぎじゃ・・・」
絡む絡む。

「ん~~?私の言うことが聞けないの~?」
「そうゆうんじゃなくてさ・・」

「あのこといっちゃおっかな~♪」
「いただきますっ!!!!」
もうういやだ~。

そんな光景をうらやましそうに、そして俺に対して殺意にも似た感情で、後ろではおっさんたちが見ておりまして。

そんな折。
「カラオケやるぞ~!!!」

うわー。おぶ君までできあがっちゃってるよ。

その焼肉屋にはなぜかカラオケがありまして、宴会などで使用されていたみたいです。

「最初は○○さんのメリージェーン!!!」
うわ。いきなりそんな曲から・・・。

曲が始まりかけたときです。

ガタ。

ガタガタ。
周りの人たちが立ち上がります。

ん?なんで?

すると、隣同士で抱き合って、チークダンスみたいになっております。
宴会恒例の様子でした。

ぐいっ

いて。

襟を誰かに引っ張られます。

犯人は、ひでみちゃん。
「はい。踊るよ♪」
え・・・。

「早くたって!」
「う、うん。」
猛獣の目が怖いんですけど・・・。
本当に後ろみれません。

「俺踊ったことないからさ・・・。」
体よく断ろうと、そういった瞬間。

「んじゃ、俺と踊ろう!」
「いや!俺だっ!!」
「なにを!俺にきまってるだろ!!」
おっさん達の小競り合い。

「本当に言われたいみたいだね~?」
「・・・・はい。すいませんでした。」

やったこともないチークダンス開始です。


Mary Jane on my mid~♪


「親父!ライトいつのも!!!」
おぶ君の一言で店内の蛍光灯が消され、ミラーボール的なライトが登場。

普通、こんなん焼肉屋にねーよ。
というか、カラオケだって普通の焼肉屋にはありません。

この人達好みの店作りさせられてるのか・・・。
ちょっと親父さんに同情。
が、その親父さんも奥さんとノリノリでチーク中。

心配して損しました。

あんだけいきり立ってたおっさん達も近くにいる、おばちゃん連中で妥協したらしく。
でも妥協のわりにはずいぶん楽しそうです。

「みぃみとちゅーしたの?」
「え?!な、なんで!?するわけないじゃん!!」

「しっ!」
歌を歌っているおっさん以外、本当にいい雰囲気になっています。
ここで大声だすのは確かにKYです。
(当時KYなんて言葉はなかったですけどね。

「なんで~?してもいいんだよ~?」
「だから・・・。俺結婚してるし・・。」

「そんなの関係ないじゃん~」
大ありですよ?ひでみちゃん。

「そっか~。してなかったんだ~」
「そうですっ!」

「んぢゃ、あたしが先にしちゃお♪」
え!


Mary Jane on my mid~♪


店内が暗くなって、ミラーボールだけになっているため、隣同士で踊っていても、向き合ってる人以外はほとんど何しているかわかりません。
そんな最中、ひでみちゃんに唇を奪われたのです。
本当に驚いたときってゆうのは反応ができないもので、それを拒むことすらできませんでした。


foever I love you~♪


歌が終わると同時に店内の蛍光灯が灯りました。
急いで離れる俺。

「さぁて。次は誰が歌う~?」
この様子を見ると誰も気が付いていない様子。

ふぅ・・。よかった。

誰かに見られていたら、それこそ事件です。
そんなことをしでかしたひでみちゃん。

「これで秘密2つ目~♪」

あぁ。神様。
俺の人生どうなっちゃうのでしょうか・・・。


→~誕生~その16話へ

※毎日書かないといけないような雰囲気になりつつ、自分でも書かないと落ち着かないという悪循環に陥っております。
誰か助けて~

【2009/04/08 09:42 】 | 暇つぶし | 有り難いご意見(0) | トラックバック()
~誕生~ その14話

ひでみちゃんが来店してから5分くらい経ってから、俺はお店に入りました。

お店はそれほど大きくなくて、20人前後で宴会をやってしまうと、もう貸しきり状態になってしまうくらいのこじんまりしたものでした。

「おそい~~~!!!」
さっき来たばっかだというのに、すでに一番奥を陣取っているひでみちゃん。
さすがとしかいいようがありません。

「ここ。ここ。」
といいながら、自分の隣の座布団をバンバン。
悪魔の特等席が設けられていました。

俺・・。無事に家に帰れるのかな・・・。

「おー。ようやく来たか!」
「おぶ君」
俺がこのT町と初めてママさんバレーの試合をしたときから、俺によくしてくれている人です。

その接し方は、息子に対するものでもあり。友達に対するものでもあり。俺にはとても心地のいい人でした。
外見はかなりいかつく、身長は俺より10cmくらい高かったです。
なで肩の俺とは対照的にいかり肩であり、”男”っといった感じの人でした。
顔つきはリアルクッキングパパ。その愛嬌のある顔もとても好きでした。

「なに飲むんだ?ビールか?」
「はい。いただきます。」
「生一杯ねー。」

ほどなくして、生中が俺のもとに届き、
「んじゃ乾杯するか。ほら。ジョッキもて。」
言われるがままにジョッキを手にする俺。

ゴト。

ゴトゴトゴト。
周りのジョッキをテーブルに置く音です。

んぁ?乾杯でしょ?

「あれ~?なんでジョッキもってんだぁ?」
「そりゃ飲みたいからでしょぉ~」

『はい♪な~んでもってんの~。な~んでもってんの♪」
一気のコールが始まってしまいました。

ぐ・・。やられた・・・。

かけつけ三杯とは、まさにこれのこと。
3杯目の一気を終えたところでようやくコールから解放されました。

「おし。よく飲んだ。」
「まだまだ余裕っすよ。」
酒にはちょっと自信のあった俺ですから、3杯一気くらいじゃ酔いません。

「ったく。この減らず口が。」
「あははは。」
本当の親子のようにじゃれあっていました。

「ひでみ~」
「ん~?」

「今日の賭けなぁ」
「うん・・・?」

「なしでいいわ。」
え?どうして?

「お前ら、がんばってたしな。」
確かにそれはがんばりましたけど・・。

「飛び出した子供な。俺の妹の息子なんだわ。」
『えぇ?!』

「妹がな。えらい感謝してた。」
「そうなの?」

「うん。あの子な。目に傷害があるらしい。」
「・・・。」
言葉を失いました。

「だからな。よく交わしてくれたって。涙流してたぞ。」
そんなことがあったのか・・。
だからブルーの目の前だったのに飛び出したのか・・。

「そんなんだからよ。賭けはチャラ!」
「おぶ君・・・」
おぶ君の心の優しさにちょっと感動していたときです。

ガォォォォオオオオ

ん?この泣き声どっかで聞いた気がするな?

「納得いかねぇぇぇえ!」
大怪獣降臨です。

「な、なんだよ!ひでみ!」
「だってあんたの身内のせいでこっちは負けたんでしょう?!」

「ま、まぁ・・。そうなるか・・・な?」
「だったら!こっちの賭けが勝ちじゃん!!」

『えええ?!?』
俺までびっくりしました。理不尽極まりねぇ。
負けたこっちをチャラにしてくれるといっているのに、逆に相手に請求するとは・・。さすがひでみちゃん。

「・・・あはははは。わかったわかった!」

「ったく。ひでみにはかなわねぇや。」
へ?いいんだ?

「でもな。ひとつ条件がある!」
「ん?なになに?」
条件付きとは。さすがおぶ君。

「あとで『ちゅ~』してくれ!!」
こいつもかよっ!

「いいよ♪どこがいい?♪」
「そりゃ・・お前。・・・口がいいだろ・・・?」

「うん♪わかったぁ♪」
どこまでも効果絶大の「ひでみちゃん『ちゅ~』」。
この人は町中の男を手玉にとってるんじゃないでしょうか?

慰労会は飲めや、歌えやのドンちゃん騒ぎ。
あっちでイチャコラ。こっちでイチャコラ。
家庭をもったおっさんおばさんがいい歳こいて、いい感じになっております。
やはり一際人気なのは、ひでみちゃん。

「ひでみ~。俺今日がんばったよなぁ~?」
「うんうん。がんばってたね♪」

「んじゃぁ~。いいことしようぜぇ~」
「わかったわ。でもあ・と・で♪」
などと、本当に手の上で転がしまくってます。

俺といえばいくらか酔いもまわってきたので、外で涼もうと立とうとしたとき。

グイッ!

服の裾を思いっきり引っ張られました。

ん?なんだ?
なんかにひっかけたか?
と、引っ張られたほうを見ると、犯人はひでみちゃん。

はい?俺なにかしましたっけ?

「どこいくの?」
「いや。外に涼みに・・・?」

「あんたいなくなったら、ここの席どうなると思う?」
「どうなるって・・・?」

「あっちにいる猛獣がわっさと押し寄せてくるのよ?」
うわぁ・・・確かにいえてるかも。

「そうなったら、誰が私を守るの?」
「ええっと・・・?」
守る必要あります・・・?

「あんたしかいないでしょ?」
「なんで俺なんです・・?」

「みぃみとの事ばらされたい?」
「誠心誠意をもって、守らせていただきますっ!」
それで俺をと隣においたのか・・・。
大怪獣を猛獣たちから守る使命・・・。
一番命が危ないのは俺なのでしょうね・・・。

おっさんたちの視線の痛いこと痛いこと。
もうちょっとで背中に穴があくんじゃないか?ってくらいににらまれてます。

こうして大怪獣との会話に華を咲かせながら、猛獣たちの熱視線を背中に浴びつつ、夜は更けていったのでした。


→~誕生~その15話へ
※本当に毎日更新するようになってしまった・・・。
 場所移すかな・・@@

【2009/04/07 15:22 】 | 暇つぶし | 有り難いご意見(0) | トラックバック()
~誕生~ その13話

焼肉屋に向かう車の中。
ひでみちゃんはあいも変わらず俺とみぃみちゃんをくっつけようとしています。
本当にどこまで本気なのでしょう。この人。

30分ほどして、焼肉屋に到着。

「ちょっと先いってるねー♪」
そうそうに降りてお店に向かう、ひでみちゃん。

「あ。二人っきりだからって~」
『しませんっ!!!』
ハモる俺とみぃみちゃん。

「うふ♪息ピッタリ。お似合いよ~♪」

やられた・・・。

でも、自然と嫌な気持ちではない俺なのです。
う~~ん。やばい方向に進んでそうな気が・・・。

「あの~・・・」
「ん?」
「ごめんなさい・・・」
恥ずかしそうに謝る、みぃみちゃん。

「大丈夫だよ。気にしてないから。」
めっちゃ気にしてますけどね。

「なんか抱き合ってたの、お母さん見てたらしくって・・・。」
なんですと。
そりゃここまでいじられるわ・・・。

一番見られたくない人に・・・。
一番という意味合いでは、妻が一番なのですが、よりによってひでみちゃんに・・・。
母上様。俺の人生おわったかもしれないです。

凹み気味で車を降りる俺。

「あれ?みぃみちゃんこないの?」
車から降りてこないみぃみちゃん。

「ちょっと用事が・・・。」
そりゃ年頃の娘さん。休みの日は予定くらいあるでしょう。

「もしかして彼氏とか?」
「・・・・そんな感じです。」
この言葉には、内心かなりびびりました。

でもすぐに納得できます。だってこの子かわいいもん。
こんだけかわいかったら、誰かがほっとくわけもなく。

「そっか。んじゃ彼氏またせるの悪いから、はやくいってあげな。」
努めて明るく振舞う俺。

「・・・・はい。」
さっきとは打って変わって元気のないみぃみちゃん。

「あ。そうだ。」
なにかを思い出したみぃみちゃん。

「お母さん酔っ払うと大変なんで・・・。」
はぁ。予想できます。

「なんか暴れるとか。」
ひぃ・。まぁそれくらいなら。

「なぐりつけてくるとか。」
ふぅ・・。よくいますよね。そうゆう人。

「キス魔になるとか。」
へぇ・・・。う~~ん?

「その他もろもろあるんで・・・」
ほぉ・・・・。まだあるんですか・・・。

「がんばってくださいね♪」
・・・俺も帰っていい?

「また私迎えに来ますから、終わったらこの番号に電話してください♪」
そういって渡された紙には番号だけじゃなく、メールアドレスまで書いてありました。

これは思いがけない収穫です。
こう見えてもナンパ・合コンの類をしたことがなかった俺は、どうやったら連絡先を聞き出せるのか、思案していたからです。
俺を知ってるやつからの苦情が殺到しそうですけども。

そんなことねーよ。とか、
うそつくなー。とか。
いわないの~♪てかいわせな~~い♪

意気揚々と焼肉屋へ向かう俺なのでした。

 

→~誕生~その14話へ

【2009/04/06 14:08 】 | 暇つぶし | 有り難いご意見(0) | トラックバック()
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