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【2024/05/17 01:58 】 |
~誕生~ その12話

そんなこんなで秋の町民運動会は終了を向かえ、この後の慰労会のために一旦家に戻ることになりました。

以外に白熱したおかげで汗でぐだぐだ。
気持ち悪くなりそうだったので、汗を流すことに。

シャー

なんでこうスポーツのあとのシャワーって気持ちがいいんでしょう。
体を洗い終わって、もう少しで出ようかなと思っていたときです。

トゥルルルル

家の電話が鳴っているのが聞こえました。
「はい。もしもし?」
お義母さんが電話にでたのがわかりました。

誰からだろう。まぁ俺には関係ないか。

シャワーを浴び続ける俺。

「ひでみちゃんから電話よー。」
なに?俺に??
慌てて、お風呂場を後にして、電話にでると

「今日の慰労会は、T町の焼肉屋でやるから。」
「T町の?」
「そうそう。賭けのこともあるからさ。」

すっかり忘れてました。
俺らが優勝しなかった=賭けに負けた=焼肉代払う でしたね・・・;

「あー・・そうだったね。」
「んでね。あとで迎えにいくから待っててねー。」

ガチャ。ツーツーツー。

こっちの意見は無しですね・・。
あとでとはいつなのでしょう・・?
わからないので、即効準備をするはめに。

「どっかいくの?」
妻が聞きます。

「あぁ。運動会の慰労会だって。」
妻はもう妊娠5ヶ月目ということもあってお腹が目立つくらいになっていました。

「無理に町の行事参加しなくてもいいんだよ?」
「大丈夫だよ。」
今考えれば、俺のことを思って言ってくれていたこと。
そのときもわからなかったわけではなかったのですが、やはり外に出かけられることがうれしかった俺の耳には本音までは聞き取ることができませんでした。
そしてそれがのちに妻の不可解な行動に発展するとは。

俺が風呂を出てから1時間程度経ったのでしょうか。

「おまたせ~♪」
ひでみちゃんが家に迎えに来てくれました。

「んじゃ、いってくるね。」
「うん・・。」
このとき、焼肉屋での飲み会が楽しみだったせいで、妻が俺に出していた危険信号をも察知することすらできませんでした。
本当にあの時の俺は、単なるばかだったと、今でも思い返されます。
そんなことも気が付かないままひでみちゃんの車に向かう俺。
「あ。うしろにのってねぇ♪」
言われるがままに後部座席に乗り込みます。

車は発進し、T町の焼肉屋に向かいます。

「今日はお疲れ様♪」
助手席のひでみちゃんが声を掛けてきました。

「お疲れ様です~」
あれ?ひでみちゃんが助手席に?
誰が運転するんでしょう・・・?

と、後部座席から前を覗き込むと。
みぃみちゃん!?

「あれ?免許持ってたの?」
「うん♪」
やっぱこの子かわいいです。
笑顔なんて最高です。

「んんー?なんか二人仲良くなってない?」
鋭いひでみちゃん。

「な、な、なにいってんの!?」
「そ、そ、そうだよ!お母さん!!」
どもりまくりの二人。

「んんん~~~?」
そりゃ怪しみますよね。

「ま、いっか~♪」
ふぅ。なんとかかわせた・・・か?

「なんかしてたら、してたで~」
ふむふむ?

「ちゃんと嫁にもらってくれればいいや~♪」
・・・ん?

「ひでみちゃん?!」
「おかあさん?!」
「冗談よ~♪」
どこまで冗談で、どこまで本気なのか・・・。
さすがは魔性の女です。

「ま、私をもらってくれてもいいけどね~♪」
はい?
 


→~誕生~その13話へ

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【2009/04/03 11:45 】 | 暇つぶし | 有り難いご意見(0) | トラックバック()
~誕生~ その11話

この手の話はどこまで聞いてもいいものなのか、それとも聞かないほうがいいことなのか、線引きが難しいものです。
そう思案している最中に、彼女が口を開きました。

「私ね。お父さん離婚してて。」
努めて明るく話しをしてくれているみぃみちゃん。

「私が4歳のときなんだけど。」
「うん。」
幾分か肌寒い風が吹いてきています。

季節も秋。
ちょっとしたことでも心に響く、そんな季節です。

「お父さんとお母さん仲悪かったんだぁ。」
ただの見間違いか、それともごみがはいったのか。

「いつも喧嘩ばかりしてた記憶だけあって・・。」
「そっか。」
肩にかけていた、まだ使っていないタオルを手渡します。

「毎日お酒飲んで、それでお母さんのことぶったり。」
今ではDVとかで警察を介入させることができますが、昔はそのようなことがかなり当たり前だった時代もありました。
そして今ほど家庭の事情を警察沙汰にしなかったことも事実です。

「私は娘ってこともあったんだろうけど、そんなにぶたれたりしなくて。」
「うん。」
「4つ下の弟がいたのね。」
彼女には中学2年の弟がいました。
あれ?それだと5歳違いだけど・・・。

「ある日ね、お父さんがお母さんに手あげたんだけど。」
「うん・・・。」

「叩かれたときに倒れちゃって、その拍子に階段から弟、おちちゃって・・・」
「・・・・・・」

「急いでお母さんが病院連れて行ったんだけど、脳内出血してて・・・」

「そのときお母さん。お腹の中に新しい赤ちゃんいてね。」
なんてことだ・・・。

「私も、この子も、新しい命さえも殺されるかもしれないって思って逃げたんだって。」
なぜひでみちゃんがあんなに強いお母さんなのかわかりました。

「それでもね。それでも私にはたった一人のお父さんだった。」

「いくら喧嘩してても、お母さんと仲悪くても、それでも私のお父さんだった。」
「うん。」
うなずく事しかできずに。

涙をぬぐったみぃみちゃんは
「お父さんね。私の前でわっか作ってくれたんだよ?」
「わっか・・・?」

「そう。煙草の煙で。」
「そうなんだ。」

「わっかできる・・?」
「ん・・やってみるよ。」
昔練習したことがあり、普通にできることだったのですが、なぜだかそのときは曖昧な返事をしました。

今までにしたことがないくらい優しく息を吸い込み。
また同じように優しく吐き出しました。


自分でも驚くくらいきれいな”わっか”ができあがりました。

「すごい・・・きれい・・・」
「本当だ・・」
一瞬やんだ風の中、煙草の煙の”わっか”は気持ちよさそうに漂っています。

「はじめてあった時ね。」
「うん。」

「お父さんと同じ匂いがしたの。」
それは吸っていた煙草が一緒だという意味だけではないようでした。

「好きになった人もお父さんと同じ匂いしてたの・・・。」
「そっか。」

「でもね。でもね・・・。」

「その人結婚してるんだ・・・」
え・・・?

「でもね。結婚してなかったら出会ってなかったんだよ?」
「・・・・うん。」
叶わぬ恋から自らを納得させているように。

「だけど・・・・だけど・・・」
思いが先立ってはっきりとは聞き取れません。


「なんで私を先にみつけてくれなかったの?」

「なんで他の人なの?」

「なんで私をおいていくの?」

「なんで迎えにきてくれなかったの・・・・・」


それは自分に向けられた言葉のようで、それでも実は違った意味を持っているようでもあり。

ただ彼女の言葉にならない、感情そのものを自分が呼び覚ましてしまったこと、今の自分にできることはなんなのだろうと。

運動会の汗が引いてきて、ちょっとだけ震えた俺に、そっと自分が掛けていたブランケットに入れてくれ、

「ずっとこうしていられたらいいのに・・・。」

風にかき消されそうなほど微かな声で。

それは、今までのどんな言葉よりも俺の中に染み込んでいってでも、実際にはそれができないことへの償いなのか、それとも単なる、男としての欲望であったのか、静かに彼女を腕の中に導きいれたのでした。



→~誕生~その12話へ
 

【2009/04/02 10:51 】 | 暇つぶし | 有り難いご意見(0) | トラックバック()
~誕生~ その⑩

落胆の色を隠せないひでみちゃんと俺。

そこにヒデミンジャー。
「おいおい。どうしたぁ?」
「そうだよ。ひでみちゃん。」
「ひでみちゃんが元気ないと、つまんないよ」
俺はどうでもいいのね。

「あのさ・・・」
「ちゅーなんだけどさ・・・」
「うん。俺らがんばったじゃん・・?」
確かにがんばってはいました。

「それで俺らで相談してみたんだけどさ・・・」
俺らで相談?勝ったらのご褒美なんだから負けた時点でなしでしょうに。

「3人にっていわないからさ・・」
「この中の1人だけってくらいはさ・・」
本当に男ってばかですね。

「もう誰がされるかは決めてあるからさ・・」
へー。きまってるんだー。

「だめかな?」

ぶちっ
なんでしょうね?今の音。
何かが切れるような・・?

「うるせ~~~~!!!!!!!」
大怪獣ヒデミン誕生です。
そこらにあったリレー用のバスケットボールを手当たり次第に投げつけてます。

「うらぁぁぁぁあああああ!!!」
これキングギドラより強い。
歴代のどのヒーローが戦っても勝てないんじゃないでしょうか?

しかし、ここには我らがヒーロー、親父戦隊がいます。

”たすけてー。ヒデミンジャーーーー”

親父戦隊ヒデミンジャーVS大怪獣ヒデミン。

合体ロボを登場させる間もなく、あっという間に大怪獣の勝利でした。
ひでみちゃんの『ちゅー』どころか、ボールに顔面ちゅーされまくったヒデミンジャー。
ここまでされるとさすがにかわいそうとも思えますが、大怪獣はそんなことはお構いなし。

「いっぱい練習したのにさぁ!!」
『ごめん』
「あんなにがんばったのにぃ!!!」
『・・・ごめん』
大怪獣の雄たけびに親父戦隊はタジタジです。

「なんで?どうして??」
「ひでみちゃん・・・」
「そこまで勝ちたかったんだ・・・」
「本当にごめんな・・・」
そこまでの気持ちだったのかと、ヒデミンジャーがへこみかけたところ。

「焼肉~~・・・!!」
『あ?』
はい。ばれました。

実はというと、俺とひでみちゃんはママさんバレーを通じて知り合いになった部落の人たちと賭け事をしていました。
お金をかけるわけではなくて、この運動会が終わったあとで開かれる慰労会での
”食べられる焼肉の量”をです。
(お金じゃないから違法じゃないです。

いくらひでみちゃんと俺がいるといっても、他がヒデミンジャー。
その賭けに参加した誰もが決勝まで進むとすら思っていなかったのです。
ゆえに馬鹿な親父連中を本気にさせるための「ご褒美は『ちゅ~』」作戦なのでした。
まさかあそこまで気合がはいるとは思っていなかったのですが。
言った当人のひでみちゃんには悪びれる様子もなく。

「だって焼肉たべたいじゃん!!」
そうですね。
だからといって男心を弄ぶとは・・・。
魔性の女とはこの人のためにある言葉ではないかと思いました。

ん?まてよ・・・
この親ってことは、みぃみちゃんも・・・?

「あの子も魔性だからねぇ」
心までも読めるのですか・・・?
さすが魔性の女。

「だまらっしゃい!」
はい・・・。すいません。

「よろしい」
本当に会話がなりたっております。

 


→→→

「おしかったですねぇ・・?」
喫煙所で煙草を吸ってるところにみぃみちゃんです。

「うん・・」
煙草を消そうとする俺。

「あ。消さなくていいですよ。私煙草の匂い好きなんで。」
煙草のにおいが好きって女の子は初めてでした。

「そうなの?」
「はい。」
少しの沈黙のあとに。

「なんかお父さんの匂いみたいで好きなんです。」
みぃみちゃんはお父さんが好きなんだなぁくらいにしか思いませんでした。

「私、お父さんいないんで・・・」
え・・・


→~誕生~その11話へ


※もうメイポブログって肩書きやめるか・・・
 本当にケータイ小説みたいになってきたorz

【2009/03/31 12:52 】 | 暇つぶし | 有り難いご意見(0) | トラックバック()
~誕生~ その⑨

ボールを受け取り、初めて本気でレースに挑む俺。
3m先にはガタイのいいAチームがいます。
なんなく追いつく俺でしたが、

「先にはいかせねぇよ!」
さすがに体でブロックしてきます。

おまえなんかにかまってる暇なんかない!

「おい」
「あ?」
相手がこっちを右にちょっと振り向いた瞬間。
即座の切り替えしで相手のインコースの左側をすっとかわします。

「あっ!」
気づいたときんはすでに遅く、もう隣に並んでいます。

足の速さなら完全に俺に分があるため、並ばれてしまってはもう後の祭り。
簡単に追い抜かすことができました。

残すは1位のDチーム。グラウンド半周が過ぎた時点でまだ半周差。
Aチームの妨害がひびきます。

しかしDチームもよくよく見るとそんなに早くない。

走りながらわかったことですが、Dチームは第3走者までが早いだけでアンカーは並。
最初につけた大差によって決勝まで進んできた様子。

これならいける・・・か?!

ボールをもって3歩以上歩かないようにと、細心の注意をはらいながら。
それでも自分の中でできる限り早く。

前の選手を見ると追いかけたい願望がでてくるため、極力前は見ないで、ボールと足元の石に目線をやりながら。
1周したとこでその差は目の前5mほどに。

歓声が鳴り響きます。

でもそのとき俺にはその歓声が一瞬やんだように思えました。
カーブに入りかけたときに上げた目線の先には。
みぃみちゃん。

”がんばれーーー!”

歓声のせいで聞こえるはずもなく、唇を読んだわけでもなく、
それでもしっかりと、すぐそばにいるかのような声が俺には聞こえていました。

俺は右手ドリブルを左手ドリブルに切り替えて
大きく右拳の突き出しました。

傍から見たら気合入れたようにも見えるのですが、俺からみぃみちゃんへの無言のメッセージでした。
それを感じ取ってくれたのか、彼女は満面の笑みを俺に返してくれました。

そしてそれは俺をさらに奮い立たせるのに十分だったのです。
レースも残り半周。差は5m程度。

気合を入れなおした俺にとって、それはないものに等しかったのです。
しかし相手も越されたくない気持ちでは負けておらず、最後の足掻きです。

俺をどうにか前にいかせないようにと、体を左右に振りながらドリブルをしています。
さっきのAチームとは違い、こっちの動きを確認しないでの妨害ゆえ、こっちのフェイントなどにかかるはずもなく。
しかし、真っすぐ走るのと、左右に揺れながら走るのでは速度は全く違います。

真後ろにはすぐにつけたものの、いよいよ抜かすとなると困難でした。

やばい。前にでれない・・・!

そのときです。
左右に揺れてすぎていたせいか、前のランナーの体が右に流れます。
俺の体も右側に流れかけていたため、切り替えしていては間に合わない。
ここぞとばかりに、バスケで言う「ターンドリブル」うまくで隣に並びました。

溢れる歓声。

ゴールまで3m。
速さでは俺のほうが上。

残り1m。
半身俺が抜け出します。

勝った!!!

そう思ったときです。
俺の横になにか飛んできました。

え?ボール?
なんでボールが飛んでくる?

振り返るとDチームの走者が誤って足でボールをけってしまったようです。

しかし、レースというのはテープを最初に切ったものが優勝です。
もしこのレースにおいてボールも体の一部であるのならば・・・
しかもボールをけったのがパス可能な1m範囲にはいってから・・・

まずい!!

最後の力をしぼって踏み出した1足とボールがテープを切った瞬間

ばんっ!

スタート銃の音がなりました。

歓声が一瞬で鳴り止みます。
静まり返ったグラウンドのゴールの中、自分の心臓の音だけが聞こえています。

どっちだ・・・


”優勝は・・・・Dチーム!!”


再び歓声。
唖然とするCチーム。

「なんでだよっ!」
俺が言葉を発する前に

「ふざけんなっ!!!」
ひでみちゃん。

「こっちのほうが早かったじゃん!」
しかし、そんな言葉も周りの歓声でかき消されます。
「なんで・・・・なんでだよぉぉ・・・」
壮絶なるレース展開だったゆえの悔しさ。


「本当にすまなかった・・・」
ブルーがみんなに謝ります。

「いや・・あれはしょうがないですよ」
俺がいいます。

「うんうん」
「ありゃしょうがない」
残りのヒデミンジャーも。

「子供に怪我させなかっただけよしとしないとね」
そして、ひでみちゃん。

俺たちがグラウンドをあとにして、自分達のテントに戻ろうとしたときです。

 

”すごかったぞ~~~!!”

”おつかれさま~~~!!!!”

”おしかったなぁ~~!!!”


表彰されているDチームをほったらかしで、俺らCチームへの歓声が上がります。

チームのまとめ役、活力になって先頭を切ったひでみちゃん。
動機は不純でも、力の限りがんばってくれたヒデミンジャー。

そのすべてがレースを通じて、会場につたわっていたのです。

拍手と歓声の波に飲み込まれる俺ら。

あと一歩届かなかった・・・
あと数十cmで勝てたのに・・
悔しいはずなのに・・・
割れんばかりの歓声に、うれしさがこみ上げます。

俺の横でひでみちゃんは泣いています。
これだけ賞賛を得ているんです。
感動もするはず。

「大丈夫?」
声をかける俺。

「うん。でも・・・」
「でも・・・?」

「6.0倍が・・・・・・。わ~~~ん」

そっち?


→~誕生~その⑩へ


※メイポ記事がなくなる予感・・・@@

【2009/03/28 12:47 】 | 暇つぶし | 有り難いご意見(2) | トラックバック()
~誕生~ その⑧

さすがのOS3?ヒデミンジャー?も決勝戦ともなると緊張するようで。

「勝てるかな~・・」
「あそこ強そうだな・・」
「あっちなんかみんな若い・・・」
こんな調子です。さっきまでの気合はどこへやら。

それもそのはず。いくら気合が入っていたからといっても、皆さん4,50代。
体力的にも限界が近づいてきている様子。

「2人でなんとかするしかないわね・・・」
小声で俺に話しかけるひでみちゃん。

本心はさておいて、
「気合足りなくない?」
『う~~~ん・・・』
意気消沈気味のヒデミンジャー。

「『ちゅ~』は・・・」

『がんばりますっっ!!!』
ばかです。本当に男って・・・。

まさに”目の前ににんじんをつりさげられた馬”状態。
目先の利益に気をとられてすぎです。


”ドリブルリレーの決勝戦を行います。
 参加されるチームはグラウンド中央にお集まりください。”

いよいよ決勝戦がはじまります。
決勝戦に駒を進めるだけあって、やはり手強そうです。

Aチームはガタイがよく、平均年齢も34,5歳。スピードはなさそうですが前に入られたらうるさそう。

Bチームは100m走で優勝した選手がはいっています。なにがなくとも早い早い。

Cチームは俺たちです。平均年齢は俺のせいでそこまで高くないのですが、体力に難あり。

Dチームは優勝候補No.1。平均年齢28歳と若さ爆発。
(実際のチームは色で分けられていたのですが、ヒデミンジャーで色をつかっているのでわけがわからなくなるため、A~Dで仮表現しております。)

決して賭け事をしていたわけではありませんが、倍率は
A:4.0 B:3.5 C:6.0 D:1.5 くらいです。
重ねていいますが、一切賭け事はしていませんから。
例え話ですよ?例え話。

「6.0か・・・まぁまぁね」
「ひでみちゃん。それってどれくらい?」
俺とひでみちゃんの間でリレーとは関係のない会話が進みます。

「う~~ん・・まぁ1週間分くらいじゃない?」
「まじで?!そんなに!?」
「うんうん♪」
「おぉぉぉおお!」

『?』

俺のこの燃えようにヒデミンジャーはきょとん。

「あ・・みなさん!あと1回で優勝ですよっ!」
『うん・・・』

「ちゅ~はいいんですか?」
『がんばるっ!!!』
本当ばか。

 

”只今からドリブルリレー決勝戦を行います。”
スタートの時間がやってきました。

”位置について。よ~~~~い”
ばんっ
スタート銃の音と同時に4人は一斉にスタート。

一番にカーブに飛び込んだのは、我らがひでみちゃん。
しかし、今までの試合とは違って、後続をはなすことができません。
それでもさすがはひでみちゃん。しっかり1位をキープしたまま2番手へつなぎます。

レッドにボールが渡ったときでした。
レッドの向こう側でこっちを見ている一人の女性に気づきました。
ん?誰だろう?見たことあるような・・・

離れているため、はっきりわからなかったのです。

その間にレッドはDチームに抜かれて2位に後退。
それ以上順位を落とすことなく、俺の目の前で3番手のホワイトにボールがわたります。
やっぱ早いな・・・

と、同時にひでみちゃんが戻ってきました。
「やっぱりはやいね~」
「うんうん。ちょっときびしいかな~」
「はい。これ。」
ひでみちゃんは俺に何かを渡しました。
ん?髪とめ??

「なにこれ?」
「うんと。みぃみが渡せって。」
はい?

「走ってるとき髪が邪魔そうだからって。」

さっきレッドの後ろに見えていた女性はみぃみちゃんだったのでした。

彼女の優しさが心にしみていたころ、レースといえば。
なんとか3位には後退しないでうまいこと走っているホワイトですが、1位とは距離が離れてきています。
今のところの順位としては、D>>>俺ら・B>Aといった感じ。
さらに状況はまずくなっています。

ホワイトからブルーにボールが渡ったときでした。

ピピピーーーー

まさか・・・

「青パス範囲っ!!」

よかった・・・うちじゃない・・・

しかしこれでBチーム失格です。
気持ちはわからないことはないです。決勝戦といえど1位と距離ができすぎ。
2位と1位でグラウンド1/4くらいあいています。
こちらの走者もブルー。一瞬あせりましたが、失格でないだけ安心かと思ったとき。

わぁぁぁー!!!

歓声が上がります。悲鳴交じりの。
なんと先頭がこけていました。これはまさに奇跡!

いけブルー!ぬかせブルー!!
チャンスと思ったのはブルーも一緒で、

「うおぉぉぉぉぉおおおお!」
気合満々爆進中です。

これならいける!
確信にも似た自信が俺の中にみなぎってきました。
しかし、本当の悪夢はこのあとだったのです。

『ぱぱ~!!!』

ちっちゃな男の子がレースに乱入してきたのです。
しかもブルーの走っている目の前。

「あぶないっ!!!」

悲鳴があります。
間一髪。なんとか交わしたブルー。
しかし、そのときに足をひねったらしくまともに走ることができていません。

先頭を走っていたランナーのお子さんらしく、パパが元気に走っている姿が確認すると同時に、自分のテントに向かってかけていっていました。

よかった・・・怪我なくて。

ほっと安堵したのもつかの間、今度はAチームに抜かれてしまいました。
しょうがない事態とはいえ、落胆を隠せない俺ら。

でも、まだ負けが決まったわけじゃない。

みぃみちゃんが渡してくれた髪とめで前髪をちょんまげにして、気合を入れなおします。

「俺がなんとかするから」
ひでみちゃんにだけ伝えます。

「ごめんな。本当にごめんな。」
足を引きずりながらブルーは謝ります。

「おつかれっす!あとは俺がなんとかしますっ!!」
ボールを受け取って即効ダッシュ。

そのとき1位とはグラウンド半周近くも離れていたのでした。



→~誕生~その⑨へ
 

【2009/03/27 16:11 】 | 暇つぶし | 有り難いご意見(0) | トラックバック()
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